雑記-2019/12/28

 

 

*秒速0.016mm

 

 

自分がその場にいることを、いったい誰のおかげだと思ったりするんだろう。

人通りの多い場所で、ふと考えることがある。

無数だなんて言わないけれど、でも、数えきれないぐらいの人がいる。目の前にいるこのひとたちは、どうしてこんな場所にいるのか、その質問に答えを見つけているものなのだろうか。

考えて、うら寂しくなる。この世は全て記憶だというのだから、それぞれにしか与えられていない真実みたいなものがあって、時間に合わせて順繰りに消えていく。興味があるわけじゃないけれど、消えてしまうのがもったいないなと思ってみたりする。もったいないと思う感情はとても幼稚だから、そのうち忘れてしまおうとする。

 

人のいない街の風景は、そのぶん賑やかなのだと思う。初めから永遠なんてないのだから、最初からなければいい。底抜けに明るい顔をした自動販売機を見ると、そういう、すきま風みたいな感情に襲われる。そんな時に意識は、空想の街の方に、すでに飛んでいたりする。

おそらく世界はそんなに単純じゃなくて、きっと、自分以外のもの全てこそが自分をつくっている。街を歩けば、それだけ、強く実感を得る。この、自分と同じ位置にいるものは、いったい何なのだろう。同じなんかじゃないと思う。かといって、まるで別物、というわけでもなさそうだ。同じ場所にいて、同じことを思って、同じだけの意識を持っていて、それでようやく真ん中ぐらい。本当の自分は外側にいて、外側が多すぎるから暫定的にここに置かれている。想像かな。陳腐な想像だとしても、これは嘘なんかじゃない。他ならぬ自分が、そう思っているのだから。

 

自分がその場にいることは、自分のせいで、自分のせいじゃない。

ここまで言い切ってしまうと、本当によく分からないな。

誰かがきっと、自分の背中を押している。偽物の翼でも、あなたはこれでどこまでだって行ける、と耳元で囁いて、世界がこうなっているのも全てあなたの行動によるものだと、ありがたくもない事実を押し付けようと躍起になっている。

交差点を斜めに横切る。寄り道なんかせずに、目的地に向かっている。誰かが背中を押している。正しい方向なんて、なんでもいい。どうせ、誰も分からないことなのだから。きっと、夜が背中を押している。たった1ミリにも満たない距離を、どこまでも真っ直ぐな銀河鉄道みたいに進む。それが、この誰かの正体。