完全敗北

何度も言っていることだけど、僕は完全敗北できる相手を募集しています。

 

 

夜は加速して、あっという間に僕らを追い越す、とよく言われますが、本当に夜は早いものですね。みなさんはいかがお過ごしでしょうか。今起きている人はきっと、眠たいのに寝る理由を見いだせないから起きていたり、あるいはテレビゲームに対峙していたり、夜食にソース焼きそばを食べていたり、窓を開けて外の空気を楽しんでいたりするのでしょうか。僕は一番最初のパターンです。眠ることにもいちいち理由が必要なのは面倒な世界だなぁと思います。何となく、夜に起きているというより、夜に起こされているような、そんな感覚です。幸福な夜をひとつずつ越えていきましょう。

 

勝ち負けに付随するのは嫉妬や羨望、勝った負けたのいざこざ、怒りや苛立ちでしょうね。僕は勝負事というものを本気でやるような性質を持ち合わせていないので、勝ったときも負けたときも何とも思いません。ただ、僕に勝った人が嬉しそうにしているのを見て幸せな気分になることはあります。

本気で勝負をしたことがないのですよね。別に冷めてるわけではなくて、真面目に勝負事に興じようとしても、生来的な遊び心がそれを拒むのです。一般に人が勝負事に全力で挑むというのはどんな状況でしょうか。例えば受験とかですかね。僕は受験勉強においてかなり手抜きをした*1ので、全力で挑むという言葉には役不足ですね。まぁこんな具合で、勝負事に全力で挑んだ経験がないのです。

文章の冒頭に繋がる話ですけど、勝負にマジになったことがないので、殊更に勝って嬉しいと感じたこともなければ、負けて悔しいと思ったこともありません。でもその反骨精神って大事じゃないですか。何につけても心の蝋燭に火をつけることになる原因みたいなものが必要で、今はそれがなくて困ってるんですよね。

今まで高みを目指したいと思ったことってほとんど無くて、何か学問だったり絵とかの芸術活動だったり色んなことに興味はあるんですけど、飽き性だから別に極めたいと思わないわけです。本気で強くなりたいと思ってるのは小説を書くことぐらいなのですが、今まで自分が飽きてきたそれ以外の活動と物書きにどんな違いがあるのかと考えてみても、ピンとくるような正解は見えないのです。それは先天的な性質なのかもしれません。単純に書くのが好きだからとか、そういうありふれたつまらない解答です。

ある程度書けるようになってきて思うことなのですが、目指すべき到達地点が見つからないのです。かつての自分が見据えていたところまで来てしまったというか。ここから先、何が待ち受けているのでしょうか。直感ですが、これ以上 上には行けないような気がしています。一次創作とかに本腰を入れてみたりするのもありなのかもしれませんが、一次はあまりに道が舗装されていない。本気で作家を目指してみようとするにしては文章が下手だし筆速度が遅すぎる。何と言いましょうか、登ってきた山が思いの他周りに比べて低く、ここから別の山に行くのは遅すぎる、といった感じです。

――ここまで書くと、将来に悲観的なだけの人間という感じがしますが、別に手詰まりではありません。冒頭に繋がるのですが、僕は完全敗北できる相手を募集しているのです。

完全敗北。僕がその人の作品を読んで、「僕にはこのレベルのものは何年かかっても書けそうにないな」と思えるような、そんな敗北。その敗北の前に横たわっているのは、嫉妬とか苛立ちとか、そんなちっぽけな感情ではなく、圧倒的な敗北を前にして思わず笑ってしまうような、自分の世界が根底からひっくり返ってしまうことへの爽快感です。

僕はそんな完全敗北を待ち望んでいます。

完全敗北を悟れば、僕はその人を到達地点にして、もう一度青い炎を身に宿すことが出来るのでしょう。

赤色の炎を青に染めることが出来るはずなのです。

だから、僕の前に圧倒的な作品を持ってきてください。

お願いします。

*1:そのせいで結構悲惨な目に逢った