ニムロッド

 

本物と偽物の違いが分かるか?

 

何を元手に話を書くのだ? 一度ぐらいは考えたことがあるだろう。書きたいことがあるというのは最も原始的な返答で、そして答えになっていない。その理屈は逆のはずだ。何かが先んじていて、それで書きたいと思えるのだ。

何を物語に移し替えるのだろう? 経験? それ以外? どのような理屈を辿ったとしても、その基盤となる何かの存在を否定できない。何かが種になっていて、そこから茎が伸び、葉が映え、時には花が咲いたりもする。

その種は何だ?

何が種から芽を出させた?

植物を育てるのは誰だっていい。何だっていい。

種は、種こそ、自分自身の鏡じゃなきゃ駄目だ。

偶然掴み取ったような、嵐の通り過ぎた朝、右手に握られていたような。

それ以外を、世界とは呼ばない。呼べない。

 

もう一度訊く。

本物と偽物の違いが分かるか?

ちゃんと分かる。誰にだって分かる。誰にだって分かるから、俺にだって分かる。そんな権利がある。