こうやって平穏を装って一日を食べて生きていればそれでいいと思っている。

尾ひれを付ける人種だから、他人の不幸を拡大解釈するし、自分の不幸を他人に見せびらかしたいと必死だ。宛ら需要のない博覧会状態。人一倍の想像力が備わっている人間だと自負しているし、それは多ければ多いほどいいと思っていたけれど、負の側面もちゃんとセットでついてくることも自覚しなきゃやってられない。一人で黙ってりゃいいのに、何故か口に出すというエネルギーを使う方法を選択するし、そのせいで不幸に陥る経験を繰り返してきたくせに、まだ学ばない。挙句行き着くのは肥大化した自己憐憫に他人を巻き込む無神経な行動。孤独が一番だと何回学べば分かるんだ。

孤独が一番だ、他人と関わればそれだけ人を傷つけるし、自分が本質的に他人と関わっちゃいけない人間だとの自覚がクレバスの割れるがごとく深まっていく。でも孤独が寂しいとかそういう子供じみた理由だけで孤独を回避しようと必死でもがいて、それで裏切られ傷つき傷つけて孤独が一番だと再認識する。

考えるのは自分のことばかり、躍起になるのは他人への攻撃手段の架空計画。偽善の仮面を被って笑顔で他人に接するくせに、腹の底にはパンドラの箱を煮詰めたようなどす黒い感情がぶくぶく沸いている。要らないところで自己評価を低く見積もっているのに、いざそれを指摘されてみれば感情が爆ぜるところに、深層心理に寝そべる自己評価の高さが垣間見える。

誰とも会わない方が世界を傷つけずに済むんだよな。人と会話をする度に申し訳なくなる。人と会う度に自意識の高さを自覚する。目の前にいる人間の清潔さを下げるのが辛抱堪らない。別に死にたいとかそういうアレじゃない。単純に誰とも会わない方がいいと思っている。本当に。

でもそんなことを言えば気味悪がられるから、今日も明日も明後日も、昨日も一昨日もその前も、ひたすら偽物を貼り付けて人に会う。会う。会いまくる。会って笑顔で会話をする。笑顔で会話をして、今日も一日楽しかったなぁと言葉にしてみる。平穏なままに一日を消化して、その先もずっと嘘を繋いでいくのだ。

俺は本気でそういうことを考えているし、下らない会話の度に、今会話している人間の前にいるのが俺じゃなければどんなにそいつは幸せだったろうか、と常々思っている。恒久的な欠落を愛してくれなんて微塵も思ってないけど、俺をそんな人間として見下して欲しいとは切に願っている。こいつはそんな動物なんだな、と呆れて欲しいと願っている。俺は誰彼からも見下されるような未来のその先にある孤独を待ちくたびれている。