幼稚 くだらない

例えば、いなくなったら困る存在がいる。ゴミを回収する人とか線路の点検をする人とか。祇園四条の駅付近に謎めいた民族楽器を弾いている人がよくいる。あれもその類だと思う。長く居てほしいと思う。同じ人間があり続けなくたっていいから、代謝よく入れ替わりで人が楽器を弾いていてくれたら、街が幸せだと思う。自分はあれをやりたいと思わないし、投げ銭はおろか足を止めた記憶すらない。それでもいて欲しいと思っているから、どうでもいいと彼らを無視している人間より質が悪い。無責任だ。人に負担だけ押し付けて、ずっと続けばいいのにななんて口だけの綺麗事を並べ立てる。長く彼らと同じ空気を吸いたいのなら、その手助けをすべきだ。本当にそう思う。だから、彼らのことをあれこれ論じる資格がない。

こういう当たり前の話を積み重ねていけばいくほどに、八方塞がりになっていく。今に爆発するんじゃないかってぐらいにゴミ袋が詰め込まれたトラッシュケース、あれの中身を毎朝収集車に食べさせる人だって、いなくなったら困る存在に決まっている。教育とか道徳では、彼らに感謝することが正しいこととされる。そんなわけがないよな。それだけでいいわけがない。もっとわかりやすい例でもいい。普段通る道のど真ん中で愛くるしくも眠る猫の死体を片付ける人間に、感謝なんて下らないもので事足りるわけがないし。そもそも、伝えない感謝ってなんだ? 自己満足? 感謝なんかよりもっと実用的なものが欲しいだろ、せめて。彼らに給料と称して金を払っているのは直接のところの自分じゃない。だから結局、見て見ぬふりをしているのと大差がない。

見て見ぬふりをして生きているだろ。20数年も生きていて牛の屠殺される瞬間を見ないで済むのも、朝4時にコンビニでものを買える理由を知らないのも、そもそも笑って過ごせているのも、別に見れないからってわけじゃない。調べればなんでも簡単に見つかる。目を背けてるんだよな。別に目を背けることは悪いことじゃないし、俺はそんなことを言いたいわけでもない。安っぽいセンチメンタリズムで生きながらえようとしているのでもない。

無知とか思考停止を笑う割に、そんな人間もやっぱり大差ないよな。いや、言いたいことがあるわけじゃなくて。たまにはこういう分かりやすくて卑近で俗っぽいことを書いてもいいかなって思った。でも、あんまり馴染まないな。大体こういうことはもうちょっと学の深い人がやるべきことだと思うし。