リセット

アイツのことが嫌いだ――言葉にすらしたくないから、伏せながら文字を書く。アイツと言うのは人ではない。概念だ。

嫌いなんだよ。この上なく嫌いだ。どんな人間であってもアイツの前では理性のタガをぶっ壊して気色の悪い生き物になるから嫌いだ。アイツが居なければ俺はここに存在すらしなかったのだから、アイツのことが嫌いだ。アイツに手を染める自分を想像してみる。気味が悪い。死ねばいいと思う。他人がアイツに手を染めてるだけでもこの上なく気味が悪いのに、自分がどうと考えればもう虫唾が走るどころの騒ぎじゃないぜ。アイツが目の前に現れようもんなら、いっそ俺は身体を100分割にでもされて、小学生用のパズルにでもなった方がマシだ。

お前は何なんだよと人は言う。そんなの普通じゃない。普通じゃない人間を気取って楽しいか。どうせ普通じゃない自分が好きなんだろ。特別を気取ったところで奥底ではどうせ同じ人間なんだ。――こんな罵倒をもされて然るべきだ。うるせえ。異常じゃないお前に異常の気持ちが分かってたまるか。あまり人を分かった気になってんじゃねえよ。得体の知れないものを得体が知れないからって分かりやすい言葉で置き換えて歪めてんじゃねえよ。お前ら普通で良かったな。幸せだよな。

アイツが憎い。居なくなればいいのになと思う。ぶっ壊してぇ。破壊だ。全てを壊したい。アイツのことが好きだからって大人ぶってんじゃねえ。アイツのことが死ぬほど嫌いな人間を見下してんじゃねえよ。人間から動物に退化して何が大人だ。一生ぐちゃぐちゃ遊んでろ。脳内麻薬に溺れてそのまま一生上がってくんな。本能に忠実なことの何が社会人だ。何が人間だ。ああお前らは幸せだよな。一生その動物園で暮らしてろ