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眠ってそのまま一生目覚めなかったらどんなにいいのだろうね、と思ったりする夜がある。別にいなくなりたいわけじゃなくて、ただ、そんな風にして消えてしまえるのがどんなに幸せかというのを考えるのだ。誰だって一度はそういう架空の幸せに思いを馳せたことがあるんじゃないか。

無数のそれとが繋がっている。何も間違ったことじゃないし、世界はそういう風にしてできている。どうしようもなくて、そのどうしようもなさに死にたくなったりする。本当はいてもいなくてもいいような人間になりたくて、でも心のどこかではそんな人間になりたくないとも思っていて、そうやってあれこれ悩みはするけれど、でもそんな世界を肯定しなきゃ始まらない。それ自身を下らないなとは思うし、でも結局は大事に抱きしめてもいる。

中途半端なのは一番よくない。どっちかに偏るほどに人間ができてもいない。誰しもそんなものだとは思う。でもやっぱり苦しい。白と黒が入れ替わるたびに昨日を後悔する。後悔からその先が繋がらない。学ぶ学ばないじゃない。中途半端にできている。生まれながらに。殺したくなった昨日までの自分と、でも成長していない今日の自分。見比べて、やっぱり消えたいよなと思い直したりする。自分のいない世界を想像して、その綺麗さにいくらか心を痛める。自分を特別視しているわけじゃないはずだけど、でもそんな人間が世界の大多数を占めていたらそれはそれで変だ。

そんな想像で今を生きている。目標だとかそういうものじゃない。ただ単に消えたい。別に心配されたくはないからそんなことを普段から口にすることはないが、でも、そういうことを思いもしない人間をうらやましく思ったりする。自分がいなければなぁ。本当にな。肯定だの否定だのじゃないんだ。ただ、いなくなってしまえばいいのにと思う瞬間が訪れる。そうして自分のいなくなった世界を想像しては、その正しさを実感するのだ。

他の誰にも描けない風景画だとは思う。でもそんなの誰だってそうだ。別に特異な話じゃない。自分が生きる世界は特別な世界で、特別であるという点で凡だ。死にたいわけじゃない。生きたくないのかと言われれば嘘になる。ただ、生きるのを選んだわけでもない。だから苦しい。苦しいのだって嘘かも知れない。もう何が何だか分からないや。全部本当だ。嘘じゃない。ふわっと消えてしまえたらいいのにね。いなくなることすら許されないんだぜ。理不尽だよ本当に。勝手に恵まれてろよ。一人にさせろ。一生このままじゃないの。土足で踏み入るな。ああもう台無しだよ。ぐちゃぐちゃだ。