屋上メテオ

どうだろう、僕たちは夢の中でパンケーキを食べていた。

 

夢の内容を日記につけると、夢と現実の境界が曖昧になって宜しくないらしい。でも僕の青に薪をくべていたのは夢ただそれだけだから、少しぐらいそいつに人権を与えてやってもいいと思うこの頃なのである。昨日は不思議な夢を見た。隕石の墜ちた駅からの脱出を試みる夢である。同時にそこには彼女が登場する。彼女はその駅の近くの、くしゃくしゃになった折り紙のような複雑な立体構造をした高校に通っている。隕石の降った駅はもう粉々になってしまっていて、ただどこまでもまっすぐな駅のホームの残骸が白煙を上げて横たわっている。僕には予感があった。隕石の墜ちたその瞬間、彼女はちょうど駅で京浜東北線を待っていたところだったのだ。再起不能になったその駅の中で、僕は彼女の制服姿を探す。不意にやってきた列車が彼女を一瞬のうちに吸い込んでそのうちにスピードを上げる――壊れたはずの線路を何故だか鉄道が走っていた。僕はただ、その銀色の箱が見えなくなるのをじっと眺めている――

色々な話をした。街を歩いたことがあった。行き止まりで話をしたこともあった。虹を見た。よく覚えている。硝子のように輝くもの、流木のように行き場のないもの、何にだって彼女は愛を与える。アイスココアに溶けるシロップを僕は映像のように思い出せる。冬の雨と、風に踊る七色のマフラー。残像のような排気ガスの水に溶ける匂い。静寂の中で弾ける時計の針の音。街灯の明滅・・・・・・

 

彼女には死のようなモノクロの鋭角は似合わない。君には針もナイフもコルク抜きも、アイスピックも電気椅子もアイアンメイデンも分不相応だろう。もっと丸いものでいい。だから、僕たちは夢の中でパンケーキを食べていた。そういうことにしないか?