東京旅行 2日目前半

僕は今、東京のとある通りに面したとあるカフェでこの文章を書いている。目の前を人やら自動車やらが通り過ぎていくのだが、眺めが悪い。カフェの天井とビルの屋上の隙間に目を遣ってみると、煙のような速度で雲が通り過ぎて行っているのが見える。何もかもがどうでもよくなるような空しい青空だ。

 

ちょっとした理由から東京に一週間滞在することになった。今日はその2日目である。降っては止み、止んでは降るというけち臭い昨日の雨とは裏腹の天気だ。洗濯物がよく乾くのでありがたい。

n度寝から目を覚まして、洗濯物を干して電車に乗った。数十分ほど揺られて、神田は神保町に辿り着いた。昼ご飯にカレーを食べてやろうという魂胆である。何でも行列店とのことだったので、11時に開店凸をした。11時00分30秒ぐらいに入店したのに店内には人がそこそこ居た。相席のテーブルに案内され、ビーフカレーの辛口を注文する。

周りのサラリーマンは大抵が中辛や甘口を頼んでいたので、ざっこwとかそういう言葉を反芻しながらも、内心で戦慄する。一体どれだけ辛いカレーが運ばれてくるのか。注文を確定してしまった僕には対処する術がない。辞世の句と戒名を考えながらカレーが来るのを待っていると、何故か「小ぶりのふかした芋2個」と「バター」が運ばれてきた。これは何。いや芋だけど。周りの人の様子を窺ってみる。反応はまちまちだった。なんか普通に芋にバター塗って食ってる人、芋を半分に割って放置してる人、目の前に札束を置かれた猫のように芋を意に介さない人。人類の多様性。散々脳内会議を行った結果、カレー食ったあとに芋2個は重いだろということで、1個だけ食べて、もう1個はまるまる残しておいた(カレー食った後で食べた)。

これは食レポではないから、運ばれてきたカレーに関して詳らかにレポートする気は起こらない。美味かった。牛肉が美味い。ライスにチェダーチーズがかかっていて、味に深みを与えていた。確かに辛かったけれど、死ぬほどではなかった。カレーは1480円で、それが財布に少しのダメージを与えた。

食事を終えた僕は大通りを右に折れた。神田神保町と言えば言うまでもなく本とカレーの街で、文字通り古本屋が林立している。本当に。なんとなく道沿いの本屋の数を数えてみた。多いとはいえ男女男男女男女ぐらいかな、と予想していたけど、現実は本屋本屋本屋本屋本屋カレー本屋本屋いきなりステーキ、ぐらいの塩梅だった。さすがに多すぎるでしょ、古本屋。ある区画は5連続で古本屋だった。しかもどの古本屋も結構に人が屯している。樹液に群がるカナブンの様相でおじいちゃんたちが古本を品定めしている。ここまで増やしてなお需要と供給のバランスが崩れないのは不思議だなと思う。

通りをさらに進むと小川町に差し掛かる。ここまで来ると本屋勢力は僅かに影を落とし、代わりにスポーツ用品店がアホみたいに台頭している。理由は定かではない。たぶんそういうものなんだと思う。ここから御茶ノ水の方へ行くと楽器屋も異常発生していて、これまた理由は分からない。調べたら出てくるのかね。

 

僕はこれから神田の方へ向かうので、さらに通りを真っ直ぐ進む。予定は特に決めてないけど、多分ルノアールで水出しコーヒーを飲むんだと思う。財布が死ぬ。財布を殺してでも美味しいご飯を食べようと思う次第。