金星と木星と秋と冬

理系にせよ文系にせよ(積集合が空集合であるという仮定を元に議論を推し進めるナンセンスさはさておいて)どちらかかたっぽしか能がない人間を、その片方がものすごく尖ってでもいない限り、一途に嫌っている節がある。そもそも(世の中の96%はそうであってしかるべきだが)面白みのない人間というものが、会話したくないレベルで嫌いだったりする。これは同族嫌悪みたいなもので、犬と会話していると自分も犬であるかのような錯覚に陥るのと同じように、会話している相手と自分が同じレベルだという錯覚に陥ってしまうから、面白みのない言葉しか吐いて出ず、会話をする気が初めからなく、自分語りや衒学にしか意識が行っていない中身や深みのなく残念な人間と会話していると、自分もそのようであるという揺るがない事実が靄のように立ち込めて会話を覆うのである。

人生経験が浅く、大した種類の人間に出会っていないので、文理両刀の人間か、理系特化型の人間にしか出会ったことが無い(出会っていたのかもしれないがそれをスルーしている)。そもそもあまり人と会話をすることがないので、この人間は面白いことを言うなぁ、とか、よくわからないけど言動の節々に含蓄があるなぁ、とか、そういった類の、背中の奥が見え透かないような人間にあまり会わない気がする。何気ない日常会話の中で、矢庭に隕石が降ってくるかのような比喩を何の気なしに用いたり、誰もが思いつく資格を持ち得ていて、それでいて誰もが思いつかなかったことを何気なく口にしたり、聞いたこともないような言葉の話を聞かせてくれたり、謎に用途のない知識が豊富で、それをちらつかせることなく大事にしたためていたりするような、そんな人間に出会えたら楽しいんだろうな。

退屈だなぁ。面白みのない人間と会話するのはやっぱりしんどいな。さっさと捨てるか